ぐ~たらオタクの似非考察日記

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魔法科高校の劣等生 個人的解釈と18巻までの簡易まとめ

魔法科高校の劣等生とは一体どのような物語なのだろうか
3月に19巻が出るというのもあって、一旦話の内容を整理した。
ちなみにあくまで私個人の解釈です。

魔法科高校の劣等生が果たしてどんな物語なのか整理し、考えてみることにする。
ここでは基本的な世界観の設定を振り返りつつ、劣等生を読む上でわかりづらいといわれる「主人公が物語展開上何を目指しているのか」についてまずまとめる。
その上で話題になりやすいポリティカルな側面や司波達也について。
そして物語上のコアになる司波深雪の立ち位置について述べる。

1.基本設定

・西暦2095年
・現実の西暦1995年から分岐したパラレルワールド
・2045年から2065年にかけて第三次世界大戦があった。原因は寒冷化による食糧不足である。
・魔法師と呼ばれる超能力者が存在する
・魔法使いは伝統的な魔法を使用する古式魔法師と現代的な魔法を使用する現代魔法師におおまかに分かれている。
・魔法師は国家に奉仕をするように義務付けられている
・十師族と呼ばれる実質貴族階級に相当する集団が魔法師全体を統治している
・主人公は十師族の直系である。ただし、その正体は秘匿されている(現行発刊されている部分では既に公表されています)

以上が基本設定である。
必要になれば適宜情報を踏まえていくが上記を前提として論じる。

2.ディストピア的な強烈な魔法師管理社会

まず、押さえておくべきは主人公達、魔法師の境遇である。

伝説上の存在であったり迷信であった忍者や魔女といった存在が実はある法則に則った超能力を使用していた。
というのがこの世界の魔法師である。
現実世界のフィクションなどで忍者の使用する火遁の術や水遁の術といった空想上の術が実際に存在していたらというパラレルワールドになる。
こういった古代から存在する魔法師のことを物語上では古式魔法師と呼ぶ。ちなみに忍者も便宜上魔法師と呼ばれる*1

そして、その現象を科学的に解明しコンピュータを使って汎用的に使用しているのが現代魔法師である。
ただし、汎用的と言ったが遺伝的な才能を受け継がなければ魔法はそもそも使用することができない。
汎用的というのは「魔法師の中で」という意味である。
古式魔法師と違い現代魔法を主にして使う現代魔法師は国家によって人造的に作られた存在であり、特に第三次世界大戦によって武力を求めた国家が積極的に魔法師の人工交配を促進し造られた。
魔法科高校の物語の中の魔法の特性上継続して魔法を発動することが困難であり、瞬間的なエネルギーの増減に最も力を発揮する。
つまり爆発を起こしたりなどの瞬間的な現象改変をすることに最も長けているということである。
これは必然的に経済に参画することを困難にしており*2、その結果として魔法師はかなりの数が軍隊に所属することになる。
それ以外の魔法師は研究機関に所属しておりこの二つのルートが基本的な魔法師の職業になる。
実際主人公は軍人であり企業研究者という二つの職業にまたがった立ち位置にいる。

また、魔法師を管理統治する存在として十師族と呼ばれる存在がいる。
人造的な魔法師研究の際に第一研究所~第十研究所と呼ばれる研究所が存在しておりそこで開発された魔法師達が統括する組織で日本国内において絶大な権力を持っている。
主人公はその十師族の中の四葉家と呼ばれる家計の直系の長男である。
ただし、ある事情から正当な継承権を所持しておらずその継承権は妹である司波深雪が所持する。

・現代魔法師は国家によって作られた人造の存在である
・魔法の継続的使用の困難さから軍事目的での魔法の使用が最も適している
・魔法師の業界では十師族と呼ばれる貴族的統治機構が存在する

とりあえず上記の3点を抑えておくと主人公達の目的が把握しやすくなるだろう。
では、次からはその主人公司波達也、ひいては物語上の終点について推測する。

3.主人公の目的は一体何なのか

主人公の目的は一体なんなのだろうか。
これは実はアニメを見ただけの人や原作を7巻程度まで読んだ段階では若干把握しづらい。
とはいえ、流し見や飛ばし飛ばし読んでいなければおおよそ把握はできるはずだ。
端的に言ってしまえば、「魔法師社会の破壊による主人公とその妹の安寧」である。

魔法科の世界における魔法師社会は強烈な軍隊社会である。
優秀な魔法師であれば十代の段階で戦場や特殊部隊に投入されることになる。
主人公は戦闘に適した魔法師の中でも更に戦闘に特化した才能*3を持って生まれており幼少期から戦闘員としての英才教育を施されてきた。
実質的にも妹のボディガード*4である。

主人公はこうした魔法師社会の全体主義的な傾向によって引き起こされる妹及び自己の不利益を嫌悪しており、如何にしてこの状況を脱出できるか?
というのが根本的な物語上の目的*5である。
これは原作8巻、追憶編に到達した場合にようやくおぼろげであった物語上の目的が明確化してくるプロットになっており、アニメ化した範囲を把握した段階でははっきりとは見えてこない。
いわば7~8巻までがプロローグであり序破急の序に相当するというかなりマイペースな作りである。
ここまでの段階でようやく主人公の自己紹介と世界観の紹介が終わるという相当にちんたらした作りになっている。
Web小説であるからこそできた構成になっており、その意味では面白い。

基本的には自由を求めて抑圧的な社会の破壊を目指すという物語と言えるだろう。
また、面白いのは主人公のある種狂人的な側面から発生するどこかずれた魔法科世界とのギャップによって引き起こされるその妙味にある。
この点については後ほど述べる。

4.司波達也はどういうキャラか

ネット上の感想を見ると魔法科に関する言及として最も多いのが主人公「司波達也」だろう。
主人公なのだから当たり前といえば当たり前だが実際物語の展開を見てもかなりの割合で司波達也が関わってくる。
そうとなれば言及しないわけにはいかない。

まず、司波達也がどのようなキャラクターであるのか整理する。

氏名:司波達也(父方の旧姓を名乗っている)
性別:男性
年齢:16歳→17歳(高校生)
身長:175cm→178cm
体重:70kg
性格:皮肉屋、弱肉強食的で弱者を切り捨てる傾向にあるものの自分の周辺の人間は手助けする傾向にある。
家族関係:父、母(死去)、妹 他四葉家親族多数


被差別的階級者の中では支配層に誕生。
生来の強力な能力によって将来を待望される一方で親族から強烈な管理教育を受ける。
そして自己の実力によってその束縛から解放されようとしている点を踏まえると主人公の弱肉強食的思考の源泉が良くわかるキャラになっている。
実際作中で「強すぎてついていけない」と他キャラから言及されたり自己の利益に関係のない弱者にはとことん興味がない様がしばしば描かれる。
また、達也に付き合うことで実際に利益の存在する友人以外からは強烈に嫌われているという点も見過ごせない。

典型的なアンチヒーロー的キャラであるといえる。
ただし注意しなければならないのはいわゆる義賊系やバットマンのようないわゆるダークヒーロー的なキャラではないということだ。
自分以外の弱者に施しを授けたりするようなシーンはあまりない。
一方で自分の友人や同級生には手助けすることを惜しまない等自分に関係することであれば積極的に介入も行う部分がしばしば見られる。
そういった意味では非常に卑近的なキャラであるとも言える。

しばしば、主人公の台詞や行動が作者の代弁ではないかと揶揄されることが多い魔法科であるが、上記の主人公の境遇を全て踏まえた上で見ると、
むしろ、ネオリベラリズム的な台詞を語るだけのバックボーンがきっちりと構成されておりその点において非常にまっとうなキャラ造形であると感じる。
「司波達也」というキャラがどうしてこのような思想を持つようになったのかということがよくよくわかるような構成になっている。

5.敵は誰か?

さて、魔法科で理解しにくい部分として「物語上の目的」以外に「敵は誰か?」という部分がある。
アニメ放映時もしばしば敵が弱いという話が語られたが物語の構造を理解するとそうでもないことがわかる。

実は司波達也は現在進行形で追い詰められている最中だ。
では一体誰に追い詰められているのだろうか?

冒頭で管理社会からの脱出が「物語上の目的」であると述べた。
その上で考えるのであれば物語の敵はそう難しく考える必要はない。
敵は「全体主義的な管理社会そのもの」である。
これを理解していないと主人公の叔母や四葉家が味方なのではないかと読み誤ることになる。
時たま、主人公の家族が強すぎるといった感想が見受けられたが典型例である。

家族のバックが強すぎる為、章毎に出てくる物理的な敵が弱いように感じられるが実際はそれらは物語を先に進めるための駒に過ぎず毎回敵は叔母さんである。
全体主義的な管理社会の側として主人公を君臨させようとしている叔母を代表する魔法師社会と平穏無事な生活を望む主人公の綱引きが毎巻繰り広げられているというわけだ。

そしてここにキーマンとして関わってくるのが司波深雪である。
アニメの感想などを見ていると「キモウトが邪魔*6」という発言がしばしば見られた。
実はこれはある意味正解である。

上記の物語の構造を理解しているとわかるが妹である司波深雪は実は叔母が仕組んだ刺客である。
原作中にもそれを示唆する発言を叔母がしている。

この作品は明らかに意図して司波深雪を微妙な立ち位置に立たせることで読者の感情を揺さぶりにきている。
しかも面白いことに司波深雪自身は叔母から送られた刺客であるということに気づいていない*7
司波深雪はヒロインでありながら敵という面白い構造になっている。

ここに魔法科の物語の面白さがある。
司波達也と叔母である四葉真夜は司波深雪を使って常に綱引きをしている。
如何に自陣営に引きずり込めるかという熾烈な争いが毎巻繰り広げられる。
その結果巻を増すごとに徐々にではあるが司波深雪の懊悩する心理描写が増えていくことになる。

また、同時に魔法師社会の人体実験のすさまじさが徐々に開陳されていく。
光宣というキャラが途中で出てくるがこのキャラは魔法力の高い魔法師を作るために強力な魔法力をもつ近親者同士の遺伝子配合によって造られた人造魔法師であることが明かされる。
しかもその結果実験失敗により病弱な体を持って生まれることになる。
主人公の精神改造→ボディガードを使い捨てる→近親相姦により失敗した魔法師とたて続けて魔法社会の非人道性を明らかにしていく。

そして16巻で司波深雪は遺伝子調整された人造人間であり司波達也の婚約者となるようにあてがわれた存在であるということが描かれる。
魔法師社会によって人造生成された人形に過ぎないことが読者に明かされる。
執拗なまでに描写される司波深雪の美人描写などはその前フリだったというわけだ。
ここまでくると司波深雪があまりにも哀れになる構図になっている。

ここまでの過程を考えると司波深雪の精神面まで操作されているのでないかと穿ちたくなる*8が、読者受けを考えるとそこまではしないかもしれない。
とはいえ、その点について悩むシーンが今後も出てくることは予想できる。
その悩みを如何に解決するかという部分も物語上の争点になってくるだろう。

ヒロインと安易にくっついたらだめというのは定番ではあるものの面白いところだ。

6.まとめ

本当は

・科学的な魔法を使用した他作品との比較*9
・主人公の思考と作品の思想の掘り下げ。
・三人称と徹底的に感情移入を廃した上で「私達の住んでる現実世界との違いと、主人公の残虐性」からくるメタ的なコメディ要素。
・初期に見られた、英語の小説を日本語に翻訳したようなちぐはぐな文体

とか色々まとめたいことはあるけど19巻の達也が「激怒」したというという点に備えて今回のまとめはこの程度で置いておく。
どうでもいいけど、こうやってまとめておくと頭の中で整理ついていいねというのが収穫だった。

*1:ただし、しばしば魔法師と呼ばれること忍者本人が否定することがある

*2:継続的な魔法が理論上不可能であるということは機械の方が利便性が高い。例えばエアコンは電気が続く限り半永久的に使用を続けられるが魔法師はすぐに体力の限界が発生する

*3:分解と再生の魔法

*4:物語上ではガーディアンと呼ばれる

*5:具体的には「魔法による核融合発電の発明により魔法師を軍隊から解放し、引いては妹及び主人公が戦闘から離脱し平穏な生活を手に入れる」のが目的

*6:個人的にはキモウトとは思っていないが。

*7:とはいえ、実は実質的には兄の邪魔になっているのではないか?ということには気づいている。

*8:なにせ兄である主人公は精神操作されている

*9:ウィザーズブレイン、よくわかる現代魔法等々。これらに比べるとかなり低水準言語な感じが近いけどどっちにもメリット・デメリットがあるような気がする。